HAKYUN LOVE’s STORY【はぎゅらぶ】

【韓国ドラマ 怪物】のその後を勝手に妄想

【怪物★アフターストーリー】005 膝枕は突然に

005.膝枕は突然に

 

「母さん、ハン警部、イケメンだろ?」

 

母親はニコニコしている。

 

ドンシクはジュウォンに目配せしながら

「コレ、母さんに渡してやって」といって、さっきの花束をジュウォンに持たせる。

 

「え?でも…」

 

「いいから、いいから^_^」

 



 

「…お母様、コレ…どうぞ!」

 

「…まぁ、綺麗なお花!ありがとう。でも、私、こう見えても結婚して子供もいるんですよ?」

 

母親は、そう言いつつもまんざらではなさそうに頬をあかくしている。

 

 

「女っていくつになっても、イケメンと花には弱いんだからぁ〜」

 

そう言いながら、ドンシクはジュウォンに車椅子を押すように頼んだ。脇腹が痛むからと言うことは話さずに。。。

 

ドンシクは笑いながら母親に色々話しかける。

いつも物憂げな顔をしていたあの頃とはやっぱり別人のようだ。

 

母親にも、目に見えて違いが現れていた。話している人の方を目で追う。言葉に反応して笑う。

それほどちゃんとした会話にはならないが、楽しんでいる様子が見て取れる。

 

ジュウォンは「もし、自分の母が生きていたら、今ならこんなふうに過ごせたかもしれないのに。」そう思うと胸の奥が少しチクチクと痛むのだった。

 

小高い丘に着くと、そこがドンシクの父と妹の墓であった。

この村の人の多くはこの墓地に埋葬されているそうだ。

 

先ほど貰ったことをもう忘れたのか、母親はお墓に花を手向ける。

 

ドンシクが携帯で讃美歌の伴奏を流すと母は大きな声で歌い始めた。

2人も携帯の歌詞を見ながらぎこちなく一緒に歌う

 

「♪慈しみ深き 友なるイエスは〜
 われらの弱きを 知りて憐む〜
 悩み悲しみに 沈める時も〜
 祈りに応えて 慰め給わん〜」

 

認知症が進んで、最近のことは忘れてしまっても、昔からの慣れ親しんでいる讃美歌は自然に歌詞が出てくるみたいだ。

 

「母さんの美声にはイ・ミジャもかなわないね」ドンシクは往年の歌手の名前を言ったようだが、ジュウォンにはわからない。

 

ふと、母親はジュウォンの顔を見ながら「先生?ご結婚は?」

 

知らぬ間にジュウォンは先生になっている。

 

「え?先生?」

 

「まだなら、うちの娘の婿にいらっしゃいよ。親想いで本当に素直でいい子なの。日曜礼拝ではいつもオルガンの伴奏をしているのよ。」

 

「え、、、? 、、、はい。」

 

「母さん、勝手に決めちゃダメだよ。ユヨンにも好みがあるんだからさぁ。」

 

「悪いな…母さんのなかでは、ユヨンはまだ生きてるんだよ。」ドンシクが小声で囁いた。

 

それから3人で花柄のシートを広げてピクニック。

先程ジュウォンが詰めたお弁当を広げて、みんなで食べる。

 

3つ目のおかずを口にした時、母親の表情が急に変わった。

何か遠くを見つめるような目をしている。

 

「母さん、どうしたの?辛いものでもあった?」

 

「ドンシクや、これ誰が作ったの?」

 

 

「ハン警部、じゃない、この先生がみんなつくったんだよ。」

 

「うちのお母さんの料理とおんなじ味。懐かしいねぇ。」と母。

 

「へぇ、ばあちゃんの?やっぱり同郷だからなにか通じるものがあるんだな」ドンシクが言う。

 

「実は、コレ桜の葉っぱが入ってるんですよ。」とジュウォン。

 

「やっぱりねぇ。そうそう、マニャンでは、日本から伝わった桜の葉っぱの塩漬けを隠し味で使う風習があったんだよ。」

 

「へー!桜が食べれるなんて知らなかったな」ドンシクは驚きを隠せない。

 

「昔、日本から伝わった時には、季節の餅菓子とかに使うためだったけど、たくさん漬けて、残すのはもったいないので、昔は色々な料理にも入れていたんだよ。」

 

お弁当を食べ終わると、久しぶりにしゃべり疲れたのか、母親は車椅子に座って寝てしまった。

 

その横でドンシクも横になる。

そのついでに、ジュウォンの太ももに頭を乗せた。

 

「‼️」ビックリして言葉も出ないジュウォン。 

 

「お腹いっぱいになったら眠くなった。昨日の夜中に起こされたからかなぁ? 10分だけ枕になってよ。」

 

言うが早いか、寝息を立てている。

 

ジュウォンは膝枕を彼女にしてもらったことすら数えるほどなのに、してあげたことなどもちろん一度もなく、、、ドンシクを起こさないよう息を殺すのが精一杯のジュウォンだった。

 

「もしかして、さっきの母さんの膝枕の夢と関係あるのかな?」そんなはずはないのに、ドンシクに夢の中まで覗かれていたような気持ちになった。

 

3時を知らせる教会の鐘の音がどこからか響いて来た。

ドンシクの前髪が風でかすかに揺れている。

 

春の柔らかな風が、甘いジャスミンの香りを運び、3人の間を通り過ぎていった。

 

 

 

 

006へ続く