【怪物★アナザーストーリー】018.千里山の夜
018.千里山の夜
そして、ある日の夕暮れ、ドンシクたちは手がかりを探して山の中を歩いていた。
しばらくして、ドンシクたちが暗い山を村へ戻ろうと歩いていると遠くから携帯の画面がチラチラ動いているのが見え、よくみると1人の女の子が息を切らしながら走って来たのだった。
「君〜!こんな夜更けになにしてんの?!」
ドンシクが話しかけると、この近くでアルバイトの面接の約束をしたが、待っている間に狼が追いかけて来て、ここまで逃
げて来たという。
待ち合わせを?なぜこんなところで?
街灯がほとんど無いような村はずれだ。
確かに20分ほど前から、日没のためだんだんと暗くなり、なぜか狼の遠吠えが聞こえだした。
女の子の話では、元々の待ち合わせ場所はもっと明るい場所だったが、狼の姿が見えて、怖くなり逃げて来たのだという。
気がつくと、狼たちはすぐ近くまで来ていた。
低く唸り声をあげて近づいてくる狼たち。5匹はいるだろうか?
もう辺りが暗いので、目だけが光って見える。
ドンシクとジュウォンは女の子を後ろにかばって警棒を伸ばし、狼の方へと身構える。
次の瞬間!襲いかかってくる狼。避けながら警棒を振るが、当たっても暗くて致命傷にはならず、何度も噛みつこうとしてくる。
「うわっ!!」ジュウォンが腕を噛まれた様だ。
「このっ!!」ドンシクが警棒で狼を叩くと「ギャン!!」とひとなきして離れた。
ドンシクは女の子に「君!携帯のライトで狼を照らして!」と指示する。
しかし、次の瞬間。狼たちは急に唸り声を止め、クルリと後ろを向きどこかへ消えていった。
うずくまるジュウォン。
ライトで照らすと、ジュウォンは右腕を噛まれて血を流していた。
「ちょっと待ってろ」ドンシクはハンカチを出してジュウォンの腕をギュッと縛った。
「とりあえず止血だけだ。君は大丈夫だったかい?!
「はい。ありがとうございました。」女の子は怖くてまだ震えている。
ドンシクは、村人聞き込みをしていたチャンスに連絡して車を回してもらい、女の子を警察署へ送り届けると、ジュウォンを病院へ連れて行く。
幸い深い傷ではなかったが、、、医師の話では「大韓民国に狼なんて、、、50年も前にもう絶滅していませんよ。きっと猟犬でしょう。」との事だった。
女の子と待ち合わせた人物は結局現れず、その後、アルバイトのサイトもいくら探しても見つからなかった。
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次の日、さらなる聞き込みや、山の周りの防犯カメラをチェックすると、この辺りに月に1回から2回ほど、数匹の猟犬を乗せた黒い四駆車が山に狩りに来ているのが分かった。
運転手の顔はサングラスやマスクでほとんどわからない。
※転生院のガレージにあった四駆は白や緑など明るい色ばかりで黒ではなかったが。
村人が狼と思い込んでいたのは、医師の話通り猟犬だったようだ。
ドンシクたちも、村人の話からすっかり狼が出たのだと思い込んでいた。
(オオカミというのは、ひょっとすると、人を寄せ付けないために教団が流したデマだった可能性もあるが、、、。)
そして、黒の四駆車のナンバーを照会してみたが、偽造されたもので、持ち主は分からなかった。
019へつづく