【怪物★アナザーストーリー】022.山火事発生
022.山火事発生
その日、ドンシクたちは暗闇に息を潜めていた。
「本当にうまく行きますか?」チャンスは心配顔だ。
「山火事になれば慌てて出て来ますよ。」ジュウォンはそう信じているのか信じたいのか、、、転生院の方を睨みつけている。
「チャミー、肝っ玉が座ってるなぁ。こんなことやって、誰も助け出せなかったら、減俸じゃ済まないのに、、、」
「チャミーはやめてください!」
夕暮れ。そろそろ約束の時間だ。
転生院の横は大きな畑が広がり、その向こうは林が続いている。
その林の向こう側から、なにやらきな臭いニオイが漂って来た。
うっすらと煙も流れてくる。
すると、林の向こう側で、赤々とした炎がちらつきはじめた。山火事が起きたのだ。
「時間通りだな」ドンシクは腕時計を見ながら呟く
炎は次第に広がり、ところどころに火柱があがる。
焦げた匂いが辺りに充満し、ゴーッと炎が唸る音や、パチパチという木が弾ける音も聞こえてくる様になった。
木が重なっていてよくわからないが、叫びながら動いている人影も見える。
山に反響してか、辺りに響き渡る叫び声。
そろそろ、転生院の中の人達も気がついて窓を開けたり外に出て見たりしている。
転生院の付近の林の中から、命からがら逃げて来た人が「大変!早く逃げてー!山火事がっ!!すぐそこまで燃え広がってて、ここも危ないですよっ!!」と、息絶え絶えに叫んだ。
転んだのか、膝からは血も出ている。
さらに火の手は大きくなり、遠くで消防車のサイレンも聞こえて来た。
次の人が走って来て、「あんた達何してるんだ!!こんなとこにいたら焼け死ぬぞ!!」と言って走りすぎていく。
さっき来た人も、慌てて山火事と反対方向へ走っていった。
それを見て、入り口で対応していた信者は血相を変えて中へ戻っていった。
「あれ?SNSに流しちゃダメって言ったのに、YouTubeで山が燃えてる映像LIVEで流れちゃってますよ?!」チャンスが困った様にドンシクに囁いた。
その動画をみたのか、信者の中の1人が慌ててドアから飛び出してガレージの中へ、、、スイッチを押すと床の一部が開き、中に向かって
「書類を出せ!材料もだ!!早く!!」と叫んでいる。
すると、中から白衣を着た人たちが、両手に書類やスーツケースなどを持ってゾロゾロと出てきた。
転生院の中からも人が出てきて、入り口の向こう側の床面がパックリとら口を開け、地下からゾロゾロと人が上がってきている。
転生院のなかに、この間は見えていなかった地下室があるのはこれで間違いのない事実となったのだ。
ドンシクは、すかさず前に会った「教祖」を見つけると
「こんばんは〜!!あれれ?他に部屋ありましたね。」といい、
「ジュウォン!チャンス!地下だ!!」と叫んだ。
止めようとする教祖を遮るドンシク。「前に言ったこと、忘れてませんよね? あの時のあなたの言葉も、録ってありますよ?」それに
「さっき届いたんですが、、、念の為、ここの施設の敷地内から化学薬品、注射針などの不法投棄があったと、捜査令状も取ってあるんですよ?」
教祖は、地下に降りていくジュウォンとチャンスを見て、もうこれまでと思ったのか、肩を落とした。
他の白衣を着た人たちは山火事からデータや研究資料を守ろうと必死になって荷物を運んでいる。
ジュウォンから無線が入り、「少女達を発見しました。生きています!救急を呼びます!」
ドンシクは、ディメンション・ワールドのジホに電話をかけた。
「作戦成功。ご協力ありがとう。」
するとまず、叫び声が消え、赤々と燃えていた森が一瞬にして暗くなり、辺りは静寂に包まれた。
そして、次の瞬間、転生院全体がサーチライトで照らされ、警察官が取り囲んだ。
サーチライトに照らされた信者兼研究員たちは、みな訳もわからずボーゼンとしていた。
023へつづく