【怪物★アナザーストーリー】010 千里山(チョルリサン)にて
010.千里山(チョルリサン)にて
韓国の人たちの間では山登りはポピュラーなレジャーなので、近くの山をトレッキングする人は多い。
しかし、ここ千里山ではほとんど人影を見る事はない。
2人は時間を作って訪れたが、、、
山は荒れ放題で、普通の車では入れず、ほとんどは獣道しかないし、近隣の人に聞き込みをしようにもまず人気がない。
仕方なく、少し離れた村で聞き込みを開始した。
村人の話を、まとめるとこうだ。
・この山には昔から子供が神隠しにあうという言い伝えがある。
・戦時中は軍事施設があり、人体実験が行われた施設があったらしい。
・月に数回とオオカミが出るので村人は夜出歩かない
・古い修道院があり、その近くでヒトダマを見た人が何人かいる
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「なんとなく胡散臭い話ばかりですけど😅」ジュウォンは言う。
「でも、オオカミを見たとか遠吠えを聞いたという人は結構多いな」
「そもそも、現代にオオカミなんているんですか? あと、ヒトダマを見たと言う人も何人もいましたね…それと今回の事件はなにか関係あるんでしょうか?」
「それを今から調べに行くんだろ?」
ドンシクはジュウォンの腕を引っ張り歩き出す。
山奥の古い修道院は、その昔キリスト教の一派らしき人たちが使っていたが、謎の疫病で全員が死亡、、、
ずっと放置されていたが、数年前から謎の新興宗教「転生院」が買い取って使っていると言う。
その宗教が引っ越してくる際には、建物の辺りを塀で覆って大掛かりな工事をしていたのに、終わってみたら前とほとんど変わっていなかったと村人は首を傾げていた。
しばらく歩くと転生院の建物についた。 レンガ作りの古い建物だ。
ジュウォンは、ベルを押す。
しばらくして中から小綺麗な白い服を着た女性が出てきた。
ドンシクは警察官のネームプレートを見せながら
「最近この辺りに不審者が出たって言う通報があって探しているんですが、なにかお気づきのことありませんか?」とドンシク。
「申し訳ありませんが、私たちは外に出ないものですから分かりません。」と無表情に言う。
「出来れば防犯カメラの映像を見せてもらえませんか?」と、ジュウォンが聞くと
「防犯カメラはありません。」
「ちなみに、こちらの施設には未成年はいませんか?」
「未成年は1人もいません。それでは忙しいもので。」と、とりつく島もない。
仕方なく、周りを一周するとすぐ近くには畑のようなものがあり、畝(うね)が作られていて、手前の方には野菜が植えられているが、奥の方は放置されて育ちすぎた白菜や、にら。
花が咲いてしまった大根などなんともおかしな感じだ。
また、古い修道院にそぐわない真新しく大きなガレージが近くにあり、高級な四駆が数台と救急車のような特殊な車が一台。畑を耕すのか、小型ユンボ(ミニショベルカー)も一台ある。
「何となく怪しいけど、何もわからないですね…」とジュウォン。
ドンシクはニヤリとしている。
「本当に分からない?」
「え?一体何がわかったんですか?」
「ほ〜ら、君はすぐになんでも人に聞こうとする。」
「…。」
「まず、建物。古い修道院の様に見せかけて、ドアや窓サッシは全て最新の物に取り替えている。」つづけて「窓には、中に人がいても影も映らない特殊なフィルムが貼られている。」
「そうか、何か違和感をかんじると思ったのはそれだったんだ」
「さっき人が出て来た扉の中に本当の入り口があって、そっちは指紋認証のロックがついていた。」
「気が付かなかった…」ジュウォンは感心している。
「時給自足を装うためか、畑もあるが収獲した形跡がない。おそらく、植えて放置しているだけだろう。」
「確かに、、、『私たちは外に出ません』と言っていたし、植っている野菜も花が咲いたり朽ちたりしていましたからね」
「ま、とにかく、間違いなく怪しいな。もう少し調査が必要だ。日も暮れかけて来たし今日はここまでにしよう。本当にオオカミが出たら食われるからな。」
2人は笑いながら山を後にした。
011へつづく